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Real life Real world

07-12


古いレシート

何気なく手に取った古いコミックの最終ページに,そのころ働いていた書店のレシートが挟まっていた。15年以上前だよ。よくそんなものがそのまま残ってたな。レシートの日付と奥付の日付を比べると発売直後くらいに買ってるな(コミックの奥付が実際に店頭に並ぶより早いのは常識でそこから逆算すると)。
長い長い昭和が終わった直後だよな,これ。その頃は書店というものをどのくらいいじくり回せるかの実験を毎日ひたすら繰り返していた頃だった。面接でこちらの話の「笑いどころ」にピタッと合わせて笑ったからという理由だけで無条件でアルバイトを採用したりしていた頃。
とある作家のフェアで作品の雰囲気に合わせた小物を実際にどかどか展示しておいたらお客さんが「そこに落とし物です」と持ってきてくれてしまったりなどということがあったのもその頃だったな。単なる年寄りの昔話に聞こえるだろうことを承知で言うけれど,このごろ POP が大流行でみんな騒いでいるけれど,そんなものは全然ちゃちな話で,ましてや誰も彼もが POP 書きだけに夢中になっている姿を私が苦々しい気持ちで見ているのは,そんなわけだからですよ。ええ。何しろこちとらお客さんが落とし物と間違えて届けてくれちゃうようなことまでしてたんだから。
その当時在籍していた書店は,会社としてはいい思い出は少ないけれど,自分が預かっていた店舗は全力でやったと言い切れるな。働き続けてくるとそういうふうに言い切れない時の方が多いけれど,あの頃は確かに。

などと思い出にふけっていてもしょうがないし,あの頃は全力でやっていたのだから今も頑張らなくてはなどと青春の浅はかさを美化するほど耄碌したつもりもないが,書いていてはっきりと気付いたことがある。
書店員だった時代に「全力でやった」と言い切れる時期が2回半だけあるけれど,それはどれも比較的悪条件だったり,店が狭かったり,外部要因で逆境だったりした時だ,ということ。つまり,工夫しなければ乗り切っていけないとはっきりしていて,しかも使えるスタッフの数が非常に限られていた時なんだな。
良く言えば「適性」だけど,むしろそれが私の限界なんだろうな。でかい組織に馴染めないとか,事業が安定して回っていくことそのものだけで半自動的に利益が上がるようなスタイルにはくさくさするとか。もっと言えば,安定している時には生来の怠け者なのでちっとも働かないとか(苦笑



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©akio ishizuka