IKIMONO net club
Real life Real world

12-31


挨拶

朝晩冷え込みますな。やたらと早起きしたのでなんだかすでに眠いような気がするとか思いながら朝食の後TVでボーっと仮面ライダーを見てしまいましたが,もしかして仮面ライダーを作っているスタッフってそれなりの高人気・高視聴率・関連商品の売り上げ等々をバックにやりたいことやって喜んでますか,だって子供番組としてはあきらかにかなり変ですけど,しかし正直なところそういうやり方って資本主義社会では一番幸せな姿かもしれないし,今の出版業界に一番欠けているのはそういうバランス感覚と逞しさなのかも,と急に思ったりしましたが,声高に言ったりすると思いっきり多方面から突っ込まれそうな気がするので公式発言にするのはやめておこうと弱気になりつつ,以前から,学問や芸術はパトロンの存在無くしては継続的に成り立つことはあり得ないと考えているので,近代市民社会(というか国民主権社会)成立以降今日にいたるまで国民一人一人が小パトロンというかパトロン集団であるわけで,パトロンを喜ばせつつ自らのやりたいことをこっそりやるというのが良くも悪しくも今の姿であって,自分たちを評価せよとか保護せよとか声高に言うのは本当はおかしいんじゃないかと,このところの図書館ベストセラー複本問題などにからんでちょっと釈然としない気分になっている今日この頃です[09:50] <挨拶



文化の本当の力

昔々,非常に貧しい若いピアニストが場末のバーでピアノを弾いて暮らしを立てていたけれど,偶然ある魅力的な女性ボーカリストと一緒にステージに上がった時,閉店間際の最後の瞬間に思わず全力でショパンのノクターンを弾いてしまうという短編小説を書いたことがありました。
こいつは安酒に酔って「評価するなら金をくれ」と暴言を吐いたりするのですが(ちなみに某TVドラマの名台詞「同情するなら金をくれ」が吐かれるよりも前です),この話を書いた頃の私は,なぜ彼がそういうことをするのか,その意味は何なのか,ということは実は理解していなかったと思います。
単純に,このボーカリストに一目惚れして,なんとかして自分を印象づけたかったから思わずやったという風にしか考えずに書いたのだと思いますが,ではなぜ自分を印象づけようとしたら酒場向けの「ゆるい」バラードではなくショパンのノクターンでなければいけなかったのか,ということの方が重要だったのです。

ちなみに,私個人はショパンのノクターンと(上記の短編小説では具体例はありませんが,たとえば)「マイウェイ」に決定的な違いがあるというふうに思っているわけではありません。事実ある時期全く同時並行で,私が自分のテーマソングかと思うくらいに愛し,繰り返し聞き続けていたのは,バッハの平均率とジョン・レノンが歌う「スタンド・バイ・ミー」だったりしました。最近ではエミネムの lose yourself だった時期もあります。

上記のピアニストは結局ボーカリストに振られてしまいますがそういうことはどうでも良く,重要なのは自分の人生の大切な部分に掛け金を積もうとした時に彼がある曲を意識的に選んだ,ということです。
それは消費されないということです。
分かりにくいですね。
対価分楽しめば元が取れて終わりになる,消費できる,というものではなく,対価分が終わったはずなのに何かそれ以上のものがいつまでも続いてしまうために消費できない,ということです。
文化や芸術が持っている本当の力は,消費してして完結させてしまうことが不可能だ,というところにあります。
だからこそ,時として,弾圧もされるのです。



ありがとうございました

8月末の退社後およそ9.000人の方にこのサイトにお出でいただき,およそ70.000ページをご覧いただきました。名もない元書店員のサイトとしては望外のことでした。
私を紹介していただいた全ての皆さん,私のページをリンクしていただいた全ての方々に,心からお礼を申し上げます
お名前を出していいのかどうか判断が付かない方もあって,やや悩んだあげくに不公平にならないようにお名前はいっさい挙げないということにしましたが,そうです,あなたのことです。
ありがとうございました






©akio ishizuka