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09-07


サボって『ムーン・パレス』

やらなければと決めていたことの3分の1しかやってねぇ…グハッ…。
そして,サボってポール・オースターの『ムーン・パレス』に読みふける。

ムーン・パレス
ポール・オースター〔著〕・柴田元幸訳
出版社:新潮社
価格:\740
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ポール・オースターのきわめて抽象的(あるいは高踏的)な文体があまり好みではないのだが,この作品はとても面白かった。
紹介文的には文庫カバー裏の「人類がはじめて月を歩いた春だった。父を知らず、母とも死別した僕は、唯一の血縁だった伯父を失う。彼は僕と世界を結ぶ絆だった。僕は絶望のあまり、人生を放棄しはじめた。やがて生活費も尽き、餓死寸前のところを友人に救われた。体力が回復すると、僕は奇妙な仕事を見つけた。...」という文章通りで間違いないなく,たしかにある種の「青春小説」としても読めるようにはなっている。
けれども,最後まで読んでも安易な「幸福な結末」や「それなりの悟り」はやってこない。
過剰なまでの人生という「物語」。フィクションであろうとも自分の人生を「物語りたい」というかなり多くの人間に共通のこの物語り欲をグロテスクすれすれまで盛り込んで,まるで『トム・ジョーンズ』にまで先祖がえりしたかと思わせる一方,常にそのすぐ脇に,これまた過剰なまでに残酷なむき出しの現実がある。その対置が,一見ご都合主義的なストーリーや感動話もどきも全て含めて,ロードムービーのような荒涼たる現実感を作り出している。
知った風な深読みをしようと思えばいくらでもネタを用意してくれている「文学ヲタ御用達」的な作品でもあるけれど,オースターに釣られるままにそれをここで延々と開陳するのも,実に野暮。
私はこの本を楽しんだ,とだけ言っておく。

…とか「決めぜりふ」してる場合じゃない。
なんだかいろんな事を「やらなければ」と思ったら,気持ちのヒューズが一瞬飛んだ感じですな(苦笑)
「やらなければ」が苦手な中年です。
「面白いからやる」ならいっくらでもやるんだけどねぇ(←子供だから



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©akio ishizuka