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07-31


『出版時評』を読んでみる

「出版時評」出版時評ながおかの意見1994‐2002
ポット出版
¥2.310

いい装丁だなぁ。ポットさんいい仕事してるよ。
本を大事にしないたちで,それなりの値段のハードカバーでも平気で風呂に持ち込んで半身浴しながら読みふけったりする。だから新しい本を買ったらとりあえずカバーははずす。ひどい時になると,その場でゴミ箱に捨てたりさえする。
でも,久しぶりにこの装丁はしばらく眺めました。

帯が付いた状態で見ると,装丁の良さが本当によく分かるのに,ちょっと残念。

さて,やっぱりカバーを外して風呂で読みふけったのだけれど(笑), 「出版をめぐる冒険」は著者のこのような精力的な取材,きめ細かな原典主義などを背景にして取り組まれたものなのだということは,多くの人が知るべきでしょう。特に何かのテーマに取り組む時,現場に行こうとする態度,論拠と称されているものの本当の原典を調べる努力などは,多くに人に見習って欲しいものです。
ライターやジャーナリストとしてそれは常識だとその道の人々から怒られそうだけれど,どうもそれが実践されているようには思えない事例をあまりにもたくさん見てきました。出典があいまいな「言葉」だけが一人歩きするばかりか,その言葉の「語感」そのものに書いている当人がたぶらかされているのでは?と思うようなひどいものも。
その点著者はきわめて誠実です。

ひとつひとつの記事が短いという制約の弊害はあるなぁ,と思います。
もともとが字数制限のある連載記事として書かれたものがほとんどだから,直接には著者の責任ではないと思います。
けれども,短い中に情報 + 著者なりの意見,を一気に入れようとしたことで,アジテーションというふうに誤読されるかもしれない文章になっている場合が散見されます。
ある文章を読み始めて,結論が出てくる前にすでに,選ばれた単語や形容詞そのものが著者がそれについてどう感じているかはっきりと分かる。結果として,読み手を誘導するアジテーションであるかのようになってしまっている場合がある,ということですね。
たとえ正しいことを述べていても,アジテーションと誤解して受け取られれば,反対派からもアジテーションしか返ってこない危険があり,残念ながらその罠からこの本も逃れられていない,という気がします。
著者が,もっと長い長い記事を,ゆったりと書いたものを読んでみたいものです。

実は一番印象的だったのは:
『私は三十代後半だけれども,いまの若者にはあらためて「三十歳以上は敵だ(don't trust over the thirty)という言葉を贈りたい。』
という一文でした。
これは同書の251ページにあります。どのような文脈の中に出てくるかはご自分であたって下さい。
ああそうか…と思いました。著者はこのような気持ち,人生の姿勢とでもいうべきものを決して失うまいと思っているのだろう,と。
立派ではあります。
でも本当にそれで足りるかどうか,疑問にも思いました。
人生の後続者に対して示すべきは,大人ならではの強大さではないかな。
汚れてしまっても,太ってしまっても,それでもどうだ私はこれほどのものを成し遂げたぞ,これほどの大波をかぶっても立っているぞ,というような図太い強さ。
それを見た若い世代が「なにくそ,俺たちは別のやり方でもっと先へ行ってやる」と,思わず自分自身の中に行動の動機が作り出せるような姿を示してやるのが,挑戦しがいのある大人というものの存在価値ではないかと思うわけです。
…いや多分,著者はそんなことはじゅうぶん分かっているのだろうとは思いますが。

出版業界や書店業界に身を置いていて,再販制・青少年規制等々の現状について興味・不満がある人にはお勧めです。
特に,それらのことの「そもそもはどういう経緯で…?」をきちんと把握していない人は,お勧めというより,読むべき,です。それを把握せずに現状に対して不満を漏らすだけでは,建設的な「大人の」議論は出来ませんよ。



「横田や」さん

昨日,夢の中に古い民家を改造した本屋が出てきたことを書きましたが,ある人からそのような本屋が実在していることを教えてもらいました。(うう…不勉強で恥ずかしい)。
宮城県仙台市にある「横田や」さんというお店です。
第9回 仙台市都市景観賞
この本屋さんに行こう!第5回 絵本と木のおもちゃ 横田や
などのページで写真を見ることが出来ます。
夢の中に出てきたイメージにかなり近いです。(夢に出てきたバックヤード部分などはおそらく違うと思いますが)店のたたずまいはまさにこんな感じです。
ええ,もう,びっくりしましたよ。
何かのお告げですか(笑)



多くの解凍ソフトに指定外の場所へファイルが解凍されてしまう脆弱性

窓の杜 - 【NEWS】多くの解凍ソフトに指定外の場所へファイルが解凍されてしまう脆弱性が存在
うひゃあ,まいったなぁ。これはけっこう大きな問題。
あなたもこの記事に添えられている各ソフトの検証結果表を確認して,恐怖に打ち震えてみてください。



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©akio ishizuka